
Sakana AI、Google と戦略提携 — 金融と政府を中核ターゲットに
東京を拠点とする Sakana AI は 1 月 23 日、Google との戦略提携と、非開示金額の出資受け入れを発表した。Bloomberg、Nikkei Asia、MLex、BiggoFinance がこれを報じている。提携の枠組みでは、Sakana は Google の Gemini と Gemma モデル群、および Google Cloud のインフラを活用し、日本の金融機関と政府機関を主たる対象とした製品を構築する。両社は本提携を、規制が厳しくミッションクリティカルな日本の業界で "信頼できる AI" の社会実装を加速させる枠組みと位置付けている。
Sakana AI は 2023 年、元 Google Brain 研究者のデビッド・ハ氏(最高経営責任者)、Transformer 原論文の共著者でもあるリオン・ジョーンズ氏(最高技術責任者)、元経済産業省官僚の伊藤錬氏が東京で創業した。2025 年 11 月、同社はポストマネー評価額 26.5 億ドルでシリーズ B 1.35 億ドルを完了している。三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、Khosla Ventures、Macquarie Capital、NEA、Lux Capital、In-Q-Tel、Salesforce Ventures、三菱電機などが出資した。TechCrunch および同社のシリーズ B 発表ページによれば、11 月 17 日のシリーズ B 公表時点で 2026 年の拡大領域として金融、製造、政府、そして防衛・インテリジェンスを掲げていた。
Sakana AI は 1 月 23 日の発表に、通信社レベルで直接引用に耐える経営層コメントを付していない。MLex と Bloomberg は、ポジショニングについての発言を法人としての Sakana に帰属させて報じている。Bloomberg は本提携を、Google が日本の事業会社と公共セクターを Gemini エコシステム内に留め、OpenAI や Anthropic への流出を防ぐための取り組みの最新形と位置付けた。最高経営責任者のデビッド・ハ氏は、TechCrunch や同社シリーズ B 発表ページにおける既存の公開発言の中で、規模一辺倒のファウンデーションモデル競争ではなく、進化的手法、モデルマージ、日本国内の AI 主権を Sakana のアイデンティティとして繰り返し強調してきた。
数字面では、シリーズ B 1.35 億ドルは約 320 億円に相当し、評価額 26.5 億ドルは 2024 年ラウンド時点のおよそ 15 億ドルから 1.7 倍程度の引き上げである。1 月発表時点で年率換算売上や顧客数は開示されていない。既に公知の取り組みとしては、三菱 UFJ フィナンシャル・グループと金融分野の協業がある。後に公表される三菱電機による直接出資、そして防衛装備庁防衛イノベーション科学技術研究所との複数年研究委託契約は、Google 提携時点では未発表だったが、業界アナリストからは想定範囲内とされていた。

業界の見方は、本提携を単発でなく構造的なコミットメントと受け止めた。Nikkei Asia、MLex、Tech in Asia はいずれも、シリーズ B キャップテーブルに既に米中央情報局系の In-Q-Tel が入っているうえに Google 出資が重なることで、Sakana AI は日本の主権顧客と米国寄りの戦略インフラの間の繊細だが商業価値の高い軸線上に位置付けられる、と論じた。国内競合の Preferred Networks や ELYZA は結果としてポジショニング上の問いをより強く問われる。一部のガバナンスアナリストは、金融、政府、防衛の顧客に同時並行で広がる中で、キャップテーブルの組み合わせが摩擦を生む可能性も指摘する。
遠方世界としては、金融、政府、防衛に位置取る Sakana AI の戦略は、規制適合と国内クレデンシャルが参入障壁となる縦割り企業契約という、日本特有の "堀" を取りに行く正当な選択と捉えている。我々の事業はその一つ上の層 — グローバル市場に向けたコンシューマ向けキャラクター、音声、ペルソナ製品 — に立っており、直接的な競合関係にはない。間接的に恩恵を受けるとすれば、Sakana の研究ライン、特にモデルマージや進化的手法が、我々を含むスタジオが借りる日本語ベースモデルに反映されていく経路である。我々は Sakana を将来のサプライヤーかつリファレンスとして見ており、ピアとは見ていない。
今後 12 か月、我々は次の三点を注視する。(1) Google 提携のうち、実際に日本語チューニング版 Gemini の技術共同開発である割合と、Google Cloud 上の流通・リセラー的アレンジである割合。(2) Sakana の進化的手法とモデルマージ研究が、Sakana 顧客以外も使える競争力ある重みやレシピとして外に出るか、それとも企業契約の中に閉じ込められたままか。(3) In-Q-Tel、Google、三菱 UFJ、防衛装備庁が同一キャップテーブル上で同時並行的に並ぶ構図が、ガバナンス上の摩擦を生むのか、逆に前例のない "日本主権 AI" アクセスをロックインするのか。


