
米国防総省、AI ベンダー 7 社と機密ネットワーク向け契約 — Anthropic は利用規約問題で除外
5 月 1 日、米国防総省は AI ベンダー 7 社 — OpenAI、Google、NVIDIA、Microsoft、Amazon Web Services、SpaceX、Reflection — と契約を締結し、各社のモデルを国防総省の生成 AI 共通基盤「GenAI.mil」を通じて機密ネットワーク上に展開すると発表した。情報源は The Guardian、CNN、Reuters、Al Jazeera。リストから明確に外れているのが Anthropic で、同社は 2026 年 3 月以降、大規模国内監視および完全自律兵器の利用を禁止する利用規約条項の削除を拒否しているとして「サプライチェーンリスク」に指定され続けている。
今回の契約は、国防総省の Chief Digital and AI Office(CDAO)と、その下に置かれる Frontier AI Office を通じて運用される。両組織は、AI 調達を「単一ベンダーへのロックを避け、複数フロンティア事業者に試作契約を分散する」という単一ドクトリンの下に集約するため設置された。Lawfare の追跡によれば、2025 年 7 月の最初のラウンドでは、Anthropic を含む 4 社に対し 2 億ドル上限の Other Transaction(OT)試作契約が授与されていた。今回 5 月 1 日のラウンドはプールを拡張し、調達の重心を 2025 年 12 月に立ち上げられた機密 AI プラットフォーム「GenAI.mil」に再固定するものとなる。
Anthropic 側の姿勢は、ダリオ・アモデイ CEO が 2025 年末に同社と現在 Department of War と呼ばれる組織との交渉について公式声明を発した時点ですでに記録されている。同声明でアモデイ氏は、Anthropic が「合法な対外情報・対カウンターインテリジェンス任務」への AI 利用は支持するものの、大規模国内監視は「民主的価値と両立しない」と表明し、当社は安全ガードレールの撤廃要請に対し「良心的に応じることはできない」と明言した。CNBC によれば、Anthropic はその後サプライチェーンリスク指定の取消を求めて訴訟を提起している。国防総省は 5 月 1 日のリリースで CDAO や Frontier AI Office 幹部による直接の発言を引用しておらず、The Guardian と Reuters は公式説明を「多様化」「AI 供給基盤の拡大」と要約している。
国防総省は 5 月 1 日の契約について、ベンダー別の上限額を公表していない。Ethixbase360 と Lawfare によれば、2025 年 7 月分の前例に従えば、OT 上限はベンダーあたり 2 年で 2 億ドルである。これを 7 社分積み上げると、本量産フェーズの追加分を除いた試作 OT の総枠としては 14 億ドル規模に相当する。Lawfare のトラッキングによれば、国防総省は 2026 会計年度予算要求で別建てとして自律兵器関連に 540 億ドルを計上しており、その中で AI ソフトウェアは無視できないシェアを占める。比較対照として、英国の Defence AI Centre とフランスの Agence de l'innovation de defense が運用するプログラムは規模感で 1 オーダー小さい。
AI 業界の反応は層をなした。Lawfare と Tech Policy Press のテック政策コメンテーターは、本構造を「調達がガバナンスを代替できるかの意図的なテスト」と読み解いた — すなわち、連邦 AI 立法を待つのではなく、契約内の利用条項を通じてベンダー行動を形成できるかの試みである。Breaking Defense の防衛産業アナリストは、ベンダープールの拡大を、Anthropic 事案に象徴されるような単一供給者が機密展開上の交渉力を握ることを構造的に防ぐ装置と解釈した。一方、オープンソース側では、Mistral と Cohere がリストに含まれなかったことから、非米国ベンダーが今後機密業務の対象として真剣に検討されるのかという疑問が提起されている。
遠方世界としては、5 月 1 日の契約自体は当社の調達領域には入らない — 当社のキャラクターエンジン、音声、ペルソナシステムは、コンシューマおよび商用 B2B エンジンライセンス顧客向けであって、米国防総省を顧客として想定していない。とはいえ、Anthropic 事案は、当社が自らの利用規約をどう書くかという論点に直接関わる。他のスタジオやコンシューマ製品チームにキャラクター技術を供与する東京拠点の事業者として、当社は B2B エンジンライセンス標準条項のどこに監視・兵器システム・アイデンティティなりすましといったユースケースの境界線を引くかを決めなければならない。直近 9 か月の教訓は、その条項は購入者から削除を求められた後ではなく、求められる前に書いておく必要があるということだ。
今後 12 か月、当社は次の三点を注視する。(1) Anthropic 訴訟が、国防総省の「サプライチェーンリスク」ツールの限界に関する書面判断を生み出すか — その判断は、米国外を含む商用 AI ベンダー全社が利用規約設計時に参照すべき事実上のテンプレートとなる。(2) GenAI.mil の 7 社プールが、次回の予算サイクル内で 2〜3 社の主要供給者に実質的に集約されるかどうか。(3) 同盟国政府 — 特に「第三極」を打ち出した日本 — が自国 AI 調達において類似の利用条項アプローチを採用するか。これは、世界の B2B エンジンライセンス顧客が同じ条項雛形を読むことになるのか、20 通りの異なる雛形を読むことになるのかを左右する。

